A1)温湿度管理の必要性
生木で形成されているアコースティックギターは、人間と同じように呼吸しています。
湿度は、高ければ湿気を吸収し膨張したり、低ければ材に含まれていた水分が蒸発し木目の収縮によりクラックの発生など構造上の様々な不具合を引き起こす要因となり得ます。これは演奏性や出音にも影響を及ぼします。また温度については、高温になれば使われている接着剤が溶け出し接合部に緩みが生じたり剥がれたり、塗装の種類によっては塗装皮膜が変質し白濁してしまったりケース内の布地が張り付いたり跡になってしまうケースもあります。
ここ数年、この気温や湿度が原因と思われる、ネックの反り、ブリッジやバインディングの剥がれ、ボディトップの変形による弦高の変化などといった調整やリペアが大変多くなっています。
冬の乾燥と夏の高温多湿な日本の気候は、生楽器にとっては厳しい環境と言えます。今後、気候温暖化が進み夏場は、更に気温が高くなる可能性があります。高温になる車中やエアコンのない蒸し暑い部屋に、長時間置いたままにすることはできるだけ避けてください。神経質になりすぎる必要はありませんが、私たち人間と同じように、アコースティックギターにもできるだけ適温適湿の環境を作ってあげられるよう、温湿度計を活用して管理することをお勧めしています。
A2)温度は摂氏20℃前後、湿度は50%前後
湿度40%以下の状態が続く環境下では、クラックやボディトップの落ち込みやバインディング剥がれ、60%以上の状態が続く環境下では、ボディトップの膨らみやそれによる弦高が高くなるなどの症状が発生しやすくなります。したがって湿度は40%〜60%程度の状態を保つことができていれば、大きな問題が生じる可能性は少ないと考えています。
保管場所となるお部屋に温湿度計はいくつありますか? 通常1個程度かと思いますが、同じ室内でも気流の流れがある場所と湿気の溜まりやすい場所があり、温度も湿度も若干異なります。また室温が適温で保たれていたとしても、エアコン等冷暖房器具により湿度が下がりすぎてしまうケースもあります。加湿器等を併用しながら適度な湿度を保てるよう注意が必要です。
ギター1本1本収納できる温湿度を自動で調整するギター保管庫も販売されていますので、温湿度管理にはそういったものを活用されるのもお勧めです。ただ高額なため、購入には躊躇される方も多いかと思います。しかしトラブルが発生した場合、ギターの状態にもよりますが修理代も高額になる場合があります。それを考えれば決して高くない価格ともいえます。スペース的に置く場所がない場合は、外気の影響を受けにくいギターケースに、調湿剤等と一緒に入れて保管することがベストですが、スタンドに立てたり壁に掛けて置いておく場合には、そこがどのような状態の場所になるのか把握しておく必要があります。